モゴローなんちゃって日記

      フォト短歌、影、心に浮ぶ言葉たち。

モディリアーニ展

 今年の春に開館された中之島美術館(大阪市北区)に行ってきました。大阪市立科学館国立国際美術館のすぐ隣りにあります。

 「モディリアーニ展」。国内外40作品が集められていて見応えがありました。
 モディリアーニの作品の大半は肖像画です。私は美術作品の中で実は肖像画が一番好きです。写真のように写実的に描かれた肖像画もあれば、モディリアーニは長い顔と長い首、そして瞳のない目が特徴ですね。今はこの世にいないのに、まるで目の前にいるかのごとく感じられる絵の中の人。この人はどんな生き方をしたのだろう。この時何を思って画家に向かっていたのだろう。そして、画家はこの人の何を見て、どこを描きたくて描いたのだろう。そんなことを思いながら見るのが好きです。風景や物と違って生身の人間を描くのですから、当然描かれた人物と画家の関係性、その時に起った作用が表われていると思うのです。
 一時期は石の彫刻に没頭したそうで、その作品もありましたが、人の頭部は肖像画のように縦長で鼻筋も長く彫られていました。お面のような感じです。

 モディリアーニの悲劇的な人生は有名だそうですが私は初めて知りました。イタリア生まれのユダヤ人で子どもの頃から病弱でしたが、お家は裕福で教養を身に付けられる環境で育ったようです。パリに出て創作活動をしますが生前中はそう評価されることはなかったそうです。そして、アルコール・麻薬依存症を患っていました。最近、カウンセリングの学びの中でアルコール・薬物依存症についての話を聞きましたが、そこで一番印象に残ったのは、アルコールや薬物に手を出すなんて何も良いことなんてないのにどうして…と私達は思うけれど、その人達はアルコールや薬物に手を出すことでやっと生きられたのだと。そうでなかったら本当に死んでいた人達なのだ、という言葉でした。
 モディリアーニは病気により35歳の若さで亡くなります。そして、彼の子どもを産み、二人目をお腹に宿していた恋人は彼の後を追って自死します。人の顔を描き続けたモディリアーニ。その描き方は特徴的ですが、描かれた人達は劇的でも平凡でもなく、その人として本当に生きていて、それに丁寧に向き合ったモディリアーニ肖像画には一貫した光があり、不安に苛まれつつも自分を本当に生きたモディリアーニ自身がはっきり見えるように思いました。

 展示の最後にモディリアーニが友人に書いて送った言葉がありました。「自分に犠牲を強いてはいけない。君の真の務めは、自分自身の夢を守ることだ。美は、時として苦しい義務を伴うが、そこから、魂の最も美しい働きが生み出されてくるのだ」