モゴローなんちゃって日記

      フォト短歌、影、心に浮ぶ言葉たち。

「四月怪談」思い出した、一月だけど。

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霙舞う新しい風景いつの日か思い出になるまで生きてみよう

 

今日は雨だったので駅まで歩きました。現在の職場に電車通勤するようになってから3回目です。いつもは自転車ですが、雨の日はバス。ところが、先日久しぶりに雨の日バスに乗ろうとしたらバスが来ない。けっこう遠くが始発のバスなので、雨だし、遅れることは多々ありますが、バス停に並ぶ人の顔ぶれが前とは違うような…え、あれっ。時刻表を見ると、乗るはずのバスの便が無い~!知らない間にダイヤ改正されていたのだった。

次は30分後くらい。ど、どうしよう。家に帰ってカッパ着て自転車か、思い切って贅沢だがタクシーにしようか、などとあたふたしていましたが、いや待てよ、バスに乗るためにいつもより早く家を出ており、歩きで間に合うやん、ってことにはたと気づいたのでした。そうなのです。早歩きだと20分強で着くのです。そのくらい歩けよ、と声が聞こえてきそうですが、でもね、帰りはスーパーで夕飯の買物をするわけですよ。そうなると、豆乳とか、大根とか、重いわけです。なので自転車は続けます。ただ雨の日はカッパ問題があってバス。駐輪場にカッパ干し竿でもあればいいですが、そんなものはない。帰りにびしょ濡れのカッパを着るのは嫌なのでバスです。でも改正後のダイヤを見ると、40分も早く家を出ないといけない計算。それって…歩いた方が早い、いや、遅い、遅くて済むよ、家を出るのが。歩きます!歩きました!

 

雨予報でしたが、出発時にはぱらぱらくらい。そして雨というより霙でした。寒い。

駐輪場に行かない分、自転車の時より少し近い道を通りました。もうすぐ駅というところ。駅前再開発で、比較的近年できた街並みです。この駅周辺も立派になったなぁ、しみじみ。新しいマンションが建ち並び、少し冷たい印象もなくはないけど、でもきれいで落ち着いているよね。

私は一時期を除いて、子どもの頃からここに住んでいます。昔はこの駅も小さかったのに。昔この駅を利用するのは、夏休みなど祖父母のいる田舎に行く時でした。当時改札口は一つで、駅前には病院と工場、そして庶民的な一軒家。そこから工場がなくなって、小さい遊園地ができた頃もあった。子どもを連れて行ったなぁ。そして今。暗くなってから駅の改札を出る時には、駅前ビルのイルミネーションを見て、一体ここはどこなんだろうと思うことさえあります。今の駅前の街も好きだけど、でも、昔の風景を思い出すと、その風景の中にいる自分を思い出し、その頃の自分の気持ちを思い出し、思い出し…。

でも、私にとっては新しいこの風景も、私の子どもにとっては、この風景が、いつか懐かしさを覚える「思い出の風景」になるのだろうと思います。あたり前だけど、何がその人にとっての思い出の風景になるのか、何が思い起こされる風景になるのかは、それぞれに与えられたものだと思います。それは、その人自身のもの。

 

こんなことを考える時、いつも漫画の「四月怪談」が思い浮かびます。大島弓子さんの漫画。学生時代に友達が「大島弓子選集」を貸してくれて読みました。そして、私も気に入って買いました。

ちょっとネタばれになりますが(注意!)、漫画は主人公の女子校生の夢で始まります。夢の中で、時代遅れの風貌をした青年と会うのですが、彼に「あなたは今朝事故で死んだけど、肉体がある今ならまだ間に合うから、肉体に戻ってください」と言われます。青年は、実は100年前に水害で肉体を失ったあと、自分の肉体を探している霊だったのです。そして、女子校生は事故死して肉体は葬儀待ちの身。青年は自分の肉体を探す傍ら、肉体に戻れるのに戻ろうとしない霊達を、肉体に戻すべく尽力しているのでした。しかし、女子校生は味気ない生活に戻ろうとはせず、霊のまま片思いしている男子の部屋に行ったり。最初は面白がっていた女子校生ですが、肉体のない自分の存在の意味を徐々に知っていくというお話。

その中で、女子校生が幼い頃好きだったレンゲ畑に行く場面があるのですが、そこは団地予定地になっていて、女子校生は言葉を失います。それに対して、青年の霊が「君が住んでいる街の駅前も、僕が生きていた頃には森と川だったんだよ。僕は駅前を見るとせつなくなるけど、君にとっては愛おしいものじゃないのかい」と言うのです。女子校生はこの言葉に素直な心になって、…続きを知りたい人は買って読んで下さい笑。

 

この場面、この言葉、なぜかよく思い出すのですよね。今日も思い出しました。

その人にとっての、大切な風景はどこなのだろう。どこにあるのだろうか。それは、世代による違いだけでなく、その人が生きてきた中での出来事によって、ひとつひとつ違うところにあるのだと思います。