モゴローなんちゃって日記

      フォト短歌、影、心に浮ぶ言葉たち。

静かに見ている(ハマスホイ)

 

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買ってしまった…。
少し前に遠藤周作さんの「影に対して」という本を紹介しましたが、その表紙の絵。なんとも言えず心惹かれるものでした。編集者はどうしてこの絵を選んだのだろうかと。

私は知らなかったのですが、有名な画家なのですね。

ヴィルヘルム・ハマスホイ(Vilhelm Hammershøi)。

昨年、東京と山口に来てたのですね~。東京は1月から3月までだったので、コロナ前に見た方もいらっしゃるかもしれません。私も昨年1、2月は東京に何度か行ったのに…見たかったな、残念。

生涯の大半をコペンハーゲンで過したハマスホイ(1864-1916)。生前中それなりに評価されていたそうですが、死後忘れられてしまい、そして20世紀末頃から再評価されているそうです。日本には2008年にも来ています。

 

人がおらず、物もほとんどない室内。後ろ姿の女性。色彩は全体にグレーがかかっている…と言うのでしょうか。こちらの部屋から向こうの部屋のドアが開いただけの室内風景もあります。家具は一切ない。

最初見たとき、私が子どもの頃の風景が浮びました。母は病弱で、父方の祖父母と同居していました。平屋で、祖父母の住むスペースと私たち親子が住むスペースが一応部屋で分けられており、昼間私は両方を行き来していました。私は一人っ子で、母は大半伏せって横になっています。祖母が外出しているとき(祖父と父は仕事)、祖父母の部屋で過しているときの風景。狭い部屋でしたが、がらーんとしていて、時計の音だけが聞こえるのです。誰もいない部屋をじっと静かに見ている私。寂しいとか悲しいとかではありません。でも、決して楽しいうれしいでもない。あのときの時計の音や古い緑の絨毯が思い出されたのでした。

引越し前のような、そんな感じにも思えます。大半の荷物は運び出され、最後の少しが残っている。普通の日常のようなそうでないような。生活感がないというのではなく、生活感を少し離れたところから見ているような感じでしょうか。明るいとか冷たいとか、そういうものを決めつけないで、静かに見ている。そんな絵のように思いました。

実物が見たかった。今度日本に来るときまで生きていよう。