モゴローなんちゃって日記

      フォト短歌、影、心に浮ぶ言葉たち。

テントウムシ

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いつの間にいなくなったの虫たちをポッケの中から連れてくる君 

勤務先の小さな眼科医院。久しぶりにボールペンやハンドクリームなどを入れている引き出しを整理した。そうしたら、以前患者さんにもらった手作りの虫たちが出てきた。
大きな病院では、手術などが終わった患者さんは紹介元の近医に戻ってもらう。再診予約も必要最低限といったところ。なので、患者さんと親しく話すようになることはあまりない。町医者はその点違う。そんなに来る必要ないのに…という人もけっこういるし。家族ぐるみで通う人も多い。
12年勤める町医者。自宅近所のため行き帰りの自転車で患者さんとすれ違うことも多い。

10メートルくらい先から私に気づいた顔になるおばあさん。「これから(出勤)?お疲れさん」。とりあえず見えてるね、と私は思う。
朝、私が信号待ちする横断歩道で待っているおばさんもいる。片目だけコンタクトレンズをしている人。単なる近視ではなく病気絡みの人。「なんかコロコロすんねんけど、今日行った方がいいやろか?」。
眼鏡の常用装用を指示している弱視治療中の小学生。眼鏡かけずに友達と走って遊びに行くところを見てしまった。「かけてないやん…。」バレたよ~ん。

2ヶ月に1回くらい来るおじいさんだった。帽子に手作り風のものを付けている。聞くと楽しそうに話してくれた。工作好きで、そういうグループに入って子どもの集いなどで教えたり作ってあげたりしているのだそう。この間は竹とんぼを作ったよ、とうれしそうに話してくれたこともあった。話すようになったのはいつの頃か、7-8年前かもしれない。作った物を私にも持ってきてくれた。スーパーの前で見かけることもあった。そのうち帽子だったのがバンダナを巻くようになった。抗がん剤治療をしていると言っていた。そのせいで涙が出ると毎回言っていたけれど。…この1年、いやもう2年近く来ていなのじゃないだろうか。
1ヶ月毎、3ヶ月毎、定期的に受診していた患者さんがいつの間にか来なくなる。いつの間にかいなくなる。みんなどこに行ったのだろう。このテントウムシをくれたおじいさんもどこへ行ったのか。
職場で元気の出ないとき、こういう患者さんにずいぶん慰められ助けられてきた。
ありがとうございます、みなさん。